陸続きのヨーロッパ諸国は、高速鉄道も国を跨いで相互乗り入れしていることが多く、複数国を鉄道で巡る人向けの鉄道周遊券、いわゆるユーレイルパスというものが提供されています。
僕も昨年のヨーロッパ周遊の際に利用してきたので、利用方法やメリット・デメリットに加えて各国での陸路移動に関する情報を記事にまとめてみたいと思います。
目次
ユーレイルパスとは
30カ国を超えるヨーロッパ諸国をカバーする鉄道周遊券です。オランダのユーレイル社が発行しており、日本から渡航前に購入することができ、利用期間、利用国によって様々なタイプのパスが用意されており、うまく利用すれば、現地で都度チケットを購入して旅をするよりもお得な旅行ができるようになっています。
パスの予約サイトは日本語対応しているので、諸条件をよく読んだ上で発行しましょう。アプリで利用できるのでスマホもお忘れなく。
パスにはユース割引やシニア割引もあります。やはり学生時代の卒業旅行で利用したというケースを聞くことが多いですね。
インターレイルという名前のものはユーロ圏の居住者しか使えないので間違えないようにしましょう。
どのくらいお得なのか
結論から述べると、金額的にはぶっちゃけそんなにお得とは言えません。日程が短かったり、ルートによってはむしろ普通に切符を買った方が金銭的には安くつく場合もあります。
しかも座席予約が別途必要なケースも多い(アプリでは座席の予約状況がわからないので窓口やネット確認が必要)という不便さもあるため万人におすすめはできないというのが正直なところです。
日本の鉄道とは違って、ヨーロッパの高速鉄道は購入タイミングによってその料金が大幅に変動します。乗車の2ヶ月前くらいに購入するのが一番お得なので、長期休暇を目掛けてルートを決めて予約するような場合は普通にチケットを購入した方がよいかなという感じですかね。
しかし、いつでも予約することができ、キャンセルも可能というのは、経路をあらかじめ定めない旅程を進む場合には非常に便利なパスでもあるので、そういった旅をしたい人にとって、この利点は価格以上の価値があるように思いますね。
ユーレイルパス(アプリ)の使い方
公式アプリはRail Plannerという名前のものです。ユーレイルパスを予約したらアプリを入れて、パスの情報を入力しておきましょう。
列車に乗る前の事前手続きですが、まずはアプリで利用する列車を選んで予約します。
出発地、到着地と発着時間をアプリ内で選択しますが、路線によっては検索しても出てこないことがあります。その場合、手入力で発着地を入力するという運用になっていますので、検索画面で出てこなくても諦めないで路線情報などをもとに入力していきましょう。
座席予約が必要との表示がある区間については、別途、窓口かインターネットで予約することになります。ただ、2022年の夏時点ではアプリから各鉄道サイトにアクセスする機能が動かず、ネット予約は不可能でした。。。各鉄道会社のアプリを入れておけばおそらく利用できるとは思いますが、それはそれで面倒なのでユーレイル公式アプリで完結できるようになってほしいものです。
列車のチケット窓口で購入する場合は、ユーレイルを持っていることをしっかりと伝えましょう。アプリの予約画面とパスポートを見せれば、割引価格で販売してもらえます。
乗車のルールは国によって違いがあるため、詳細は記事後半を参照いただきたいですが、基本的には座席に座っていると係員が切符のチェックにくるので、発行してもらった座席のチケットとアプリのQRコードの画面を見せればOKという感じです。ネット接続ができないとアプリにQRコードが表示されないので、念の為、予約時に下記のアプリ画面をキャプチャしておくことをおすすめします。
列車内でもアプリが利用できるようにするための海外でのスマホの利用に関しては、下記記事が参考になると思います。
【利用方法解説】海外旅行では海外SIMカード利用がお得国別ユーレイル攻略法
ドイツ
ドイツの国営鉄道DBは座席指定することなく特急列車に乗車することができます。したがって、ユーレイルで予約する場合も、乗車する列車を選んでおきさえすれば、それだけで乗車可能です。
座席予約がされている席には座席上部に予約マークが点灯しているので、ユーレイルで乗車設定しただけの場合にはそれ以外の席を選びましょう。が、よほど繁忙期でない限り予約マークがついていることはめったにないです。
また、予約席であっても他の人が座っていなければ座ってOKというのがドイツ式です。もし席予約をしているのに誰かが座っていても、声をかければどいてくれるので臆さずに行きましょう。逆に予約席に座っていて、予約者が来たときには速やかに譲ってください。まあ、当たり前ですが。笑
ちなみに、ドイツでは2022年の春夏は2等列車が乗り放題の1ヶ月パスがなんとわずか9ユーロで販売されるというコロナからの復興に向けた観光推進策が取られていました。これにより、いつもは時間に正確なドイツの電車に遅延が発生しまくるという異常事態が引き起こされていたのは記憶に新しいところです。
フランス
フランスの特急列車に乗るには事前の座席予約が必要です。意外と駅の係員も知らなかったりするのですが、実は自動販売機でユーレイルパスの割引設定ができます。少々癖がありますが便利なのでぜひ活用してください。観光地の窓口は長蛇の列ができていることが多いです。
自動券売機での購入時には、上の支払い前の画面で「Do you have a reduction or Pass?」のところで、「OTHER REDUCTIONS」を選ぶと、次の画面に「EURAILPASS」が出てくるので、それを選択しましょう。これで割引価格が表示されます。
券売機利用の際の注意点は、座席予約不要の列車については予約時にエラーが発生してチケットを購入できないことです。座席予約不要の列車にはユーレイルパスだけで乗車可能なので、通常料金を追加で支払ってしまわないように注意しましょう(実は僕も過去に何度かやってしまいました)。
なお、アプリだけで移動できるはずのルートでもアプリのバーコードでは電子改札を通れないケースがあります。例えばフランスのベルサイユからパリのモンパルナス駅に移動した際、入るときには係員が通してくれたので問題がなかったものの、下車時にはゲートがパスを読み取らず、しかも周囲に係員もいないためゲートから出られないというトラブルに見舞われてしまったことがありました。偶然、通りかかった清掃スタッフのおじさんになんとか通してもらえたものの、、途方に暮れるところでした。。
フランスの高速鉄道TGVはかなり車内が狭い車両が多いです。コロナ禍でも他国が公共交通機関でマスク着用義務を継続する中、いち早く撤廃した上に実際にほとんど誰もマスクをつけないというお国柄で、やはりフランスがヨーロッパの感染拡大の震源地だったことが如実にわかりました。
ともあれ、フランスは高速鉄道の料金がかなり高いので、フランス国内を高速鉄道を利用して周遊する場合、ユーレイルの利用で随分お得になります。
ただ、バカンスシーズンなどは当日はもちろん直前は満席で予約が取れないことも多いため、気まぐれ旅行で行くのは結構な博打になってしまいます。ユーレイルパスを利用する場合でも、なるべく早い段階での予約をおすすめします。
イタリア
イタリアは駅窓口での座席予約が必要です。自動券売機でのユーレイル設定はありません。
イタリアは鉄道料金がかなり安いため、あまりユーレイルの恩恵は大きくはありませんね。
スト等で列車が止まることが多いことで有名なイタリアですが、ローカル線はともかく高速鉄道は意外と定刻運行であまり遅延に出くわしたことがないというのが僕の実感です。
スペイン
スペインは、マドリード、バルセロナを起点に放射状に列車が出ていますが、それ以外の都市間移動は長距離バスでの行程が基本になります。そのため、北方の巡礼ルートや南方のアンダルシア地方などの周遊旅をする場合、ユーレイルパスの恩恵がほとんど受けられません。
予約はスペイン国鉄Renfeの窓口で座席予約が必要です。特に注意したいのは、バルセロナのサンツ駅のようなターミナル駅では長蛇の列ができてしまうことです。順番待ちのチケットを受け取ってから自分の番が回ってくるまで2時間かかるなんてことがザラにあります。
ちなみにユーレイルの割引が不要なら自動販売機はガラガラなのですぐに買えます。ただし、現金が使えずタッチ式のクレジットカードしか使えないので注意が必要です。欧米のクレジットカードは今やタッチ式が主流ですが、日本のクレジットは未だに対応していないものばかりです。
余談ですが、買い物のたびにタッチは使えないと説明しないといけないのが結構面倒だったりするので、もしこれから海外旅行を考えている人はタッチ式に対応したクレジットカードを選ぶとよいかもしれません。
スペイン内の移動ではこちらのALSA社の長距離バスを利用するケースが多くなると思います。残念ながらユーレイルは対象外です。現地での予約も可能ですが、窓口が時間通りに空いていなかったり、自販機の紙切れでチケットが印字されずしかも英語でのサポートがないといったトラブル(実際に経験しました。。)が頻発するのでアプリでの事前予約をおすすめしておきます。
ただ、サイトからの予約だと値段が高い代わりに快適な最前列などは指定できないので、座席を選びたい場合はやはり現地調達が必要になります。
また、スペインではローカルバスの情報検索にはmoovitというアプリがおすすめです。スペインの地方都市ではGoogleマップの交通情報がほぼ役に立ちません。。現地のホテルでこのアプリを教えてもらいましたが、バスの予定はもちろん、現在地情報なども表示されるのでかなり重宝しました。主要駅から街の中央部まで距離のある都市では必須ですね。
ポルトガル
ポルトガルも列車ではなくバスでの移動が主流な上に、列車料金も安いためユーレイルパスの利用は非推奨ですね。
利用の際は鉄道駅で座席予約が必要です。リスボンの主要駅であるオリエンテ駅では、対応している窓口が1つしかないのですが、外観からはわからないのでとにかく窓口を見つけたらチケットを購入できるか聞いてみてください。
ユーレイル利用で、たとえばリスボンのオリエンテから世界遺産の街エヴォラまで正規料金の半額の5ユーロほどになりますが、そもそもの設定価格が安いので1日10往復くらいしないと元がとれませんね。。
ちなみにユーロ圏各国の物価感は下記記事が参考になると思います。
ビッグマック指数で見る世界のインフレ事情 2022オーストリア
ドイツと同様のオペレーションで、ローカル路線で座席予約をしなければアプリだけで乗車可能です。山岳地帯の路線などはあまり切符のチェックなどされた記憶がないですね。。物価は決して安いわけではないですがやはり長距離の高速鉄道を使わないのであればオーストリアでも普通に切符を購入しての移動で十分じゃないかなという印象です。
まとめ
国別にユーレイルの利用方法について見てきましたが、僕の体感的にはフランスを巡るルート設計では安くなる印象ですが、それ以外の国では長距離鉄道を多用しない場合は事前に正規料金で購入するよりも払い損になりそうです。まあ、アプリだけで完結できるドイツも利便性を考慮するとありかもしれないという感じですかね。
2ヶ月を超えるような長期間の旅程であればパスの割引率も高いのですが、実際、長期旅行の際は休息も兼ねてある程度同じ都市に留まることにもなると思うので、結果的に1日あたりの移動量も減るでしょうから、コスト面ではなかなか難しいところですかね。
結論、やはりコスパよりも直前でも変更できる利便性にメリットを感じるなら利用してもよいかなという感じでしょうか。
大変参考になりました
フランスからイギリスへ渡る予定です
イギリスでのパスの使用経験,又は情報はお持ちですか?
すみません、しばらく海外に出ていたのでリアクション遅れました。フランスからイギリスということは、ユーロスターでパリからロンドンのルートでしょうか?
ロンドンの市バスであれば、現在はオイスターカードという日本のSUICAのようなパスにチャージしておけば地下鉄もバスも利用できると思います。現金では乗れないので、地下鉄の駅の自販機または窓口で事前に購入してチャージして利用してください。
個人的に使ったことはありませんが、最近はGoogle Payやタッチ式のクレジットでも乗れるという話を聞きます。ただ、10年以上前に発行したオイスターカードが今でも問題なく利用できているので、またロンドンに行く可能性があるならオイスターカードは持っておくと便利かなと思います。
オイスターカードはロンドン以外では使えないので、もしイギリスを周遊されるような場合は現地で都度確認するしかないかなと思います。コロナ禍でタッチレスが進んだとは思いますが、コロナ以前は運転手にSingle(片道)かReturn(往復)かを伝えて現金支払いというのが主流でした・・・
ロンドンから周辺都市に向かう長距離バス(Coach)を利用される場合は、Victoria Coach Stationというところから各地に向けたバスが発着していると思います。駅でチケットを購入して、日本の長距離バスと同じ要領で乗れると思います。
複数の事業社が運行していますが、個人的にはNationalExpress(https://www.nationalexpress.com/en)をよく利用していました。
ざっとこんなところですが、具体的なルートなどわかればいろいろアドバイスはできるかと思いますので、またお気軽に聞いてみてください。
あ、上のコメントを返してから気づいたんですが、バスではなく、パスの話ですね。。。見間違えました。
ユーレイルパスはイギリスでは利用したことがないのでわからないです。。
ただ、肌感的にフランスより鉄道料金は安いですし、ルートによっては長距離バスや飛行機が有力な選択肢になるので、イギリスを周遊するとしても個人的にはユーレイルパスは使わないですかね。
一応、BritRail(https://www.britrail.com/britrail-passes/britrail-pass/)というのもあるので、イギリス国内を周遊されるのであれば、検討されてみてもよいかもしれません。