【旅する前に読んでおきたい】おすすめのベネチア本まとめ

ヨーロッパの貿易の玄関口として 1000年もの間栄華を誇ったベネチアは、歴史的にも文化的にも色彩に富んだ都市です。僕も何度も訪れてこのブログでも度々情報を載せていますが、何度行っても飽きない古都の一つです。(*注 このブログではヴェネツィアやヴェニスではなく、ベネチアに表記を統一しています)

もちろん何の情報もなく訪れても魅了されること間違いない最高に魅力的な観光地ですが、やはり歴史を知っていると旅の満足度は格段に上がります。

ということで、このベネチアに関して僕がこれまで集めて読んできた書籍からおすすめのものをざっと紹介してみたいと思います。いわゆるガイドブックは省きますが、ガイドブックがわりに使える本もありますのでぜひご参考にしてください。

海の都の物語 −ヴェネツィア共和国の一千年

まずはやはりこれを外すわけにはいかないイタリアの歴史小説の巨頭、塩野七生の傑作です。ベネチア旅行をするしないに関わらず読むべき大作ですが、訪問前にこれ一冊読んでおくだけでベネチアの景色が全く変わって見えてきます。

このブログでもベネチアの記事でしばしば文章を引用していますが、個の力ではなく制度設計によって千年も続いたこの国について、いかにその制度が作られるに至ったのか、そしてその中での人々の暮らしぶりがどうだったのか、継時的にあらゆる側面から丁寧に描写されており、とてつもない熱量を感じる作品です。塩野さん自身がこの街を、そして往時のベネチア人が大好きなんだなというのが伝わります。

この本を読んでおくと、ヴァポレットでグランドカナルの流れに乗るとき、ドゥカーレ宮を見たとき、あるいはダニエリに泊ったとき等々、あらゆる場面で、中世の面影を色濃く残すその姿へ向ける目が、無知な子供がアトラクションに向ける目から、本当に中世の歴史の中に迷い込んだ歴史家の目へと変わります。

例えば、ベネチア人の緑への執着に関する下記の記述があります。

「しかし、水の上に住むヴェネツィア人は、そう簡単に緑に囲まれる幸運に恵まれていない。それで、小さな場所でも、そこに草木を植え、花を栽培し、小さな石の彫像なども配置して、自分たちの庭園をつくるのに熱心だった。こうすると、家の中のどの部屋からも、緑を味わえるのである。上空から見ると、フィレンツェの旧市街は、実に緑が少ない。それがヴェネツィアだと、海の上に浮かんでいる都なのによくもこれまでと感心させられるほど、緑が点々と散っているのである」

この読めば、僕の贔屓のホテルであるパラッツォ・ヴェーナルトのすてきな中庭も、これは単にホテルの支配人の趣味やセンスではなく、海の上に生きたベネチア人の根底にあるある種の大地への憧れの発露であり、その伝統を踏襲したものなのだと思い至り、そんな目で見ればまた一層この歴史ある元邸宅のベネチア的側面になお一層惚れ直すことになる訳です。

ホテル パラッツォ・ヴェーナルトの中庭

他にも大量に引用したい文章がありますが、ぜひご自身で読んでみてください。ベネチアは何度も訪れているという人でも、この作品を読めばきっと新しい気づきが色々あるはずです。

塩野さんの全集の4、5の2冊に上下巻で収められているかなりの大作です。下巻はベネチアの衰退の歴史になるので上巻の方が面白さは上ですので、ひとまず上巻だけ手に取ってみてください。

ヴェネツィア物語

この本は海の都の物語の塩野七生さんと美術史家の宮下規久朗さんの共著で、写真が多くあり観光のイメージを醸成するのにもってこいです。

塩野さんのパートではやはりベネチアの歴史への言及が大半を占めますが、塩野さんの目から見た現代のベネチアの案内もあり、この本もまた旅の目線を変えるのに一役買ってくれると思います。

宮下さんパートでは建築や絵画とそれにまつわる歴史についての案内があり、ベネチア観光の予習に使えます。また書籍中には著名な建造物の紹介と地図上の案内もあり、道案内のガイドとしての使い道もあります。

サイズも小さく薄い本なので、それこそ持ち込みの手荷物に入れて行きの飛行機でさっと目を通すのにちょうど良いと思います。ベネチア旅行が決まったらとりあえず購入してそっと荷物に入れておくとお得な1冊ですね。

ヴェネツィア案内

ヴェネツィア物語と同じく新潮社の1冊ですが、こちらは渡部雄吉(撮影)、須賀敦子(旅行記)、中嶋和郎(観光案内)の3名の共著です。

サイズも同じでこちらの本の方が若干薄いんですが、文字が小さく情報量はむしろこちらの方が多めです。案内というだけあって、観光地へのルート案内なども豊富にあります。

90年代に発行されているので写真がちょっと古臭いのが気になりますが、今や撮影禁止のサンマルコ大聖堂の写真などもありイメージが膨らみます。

古いとはいえ、案内されている場所はいずれも今も残る歴史的遺構ばかりなのでガイドとして利用するのも可能ですが、いかんせん文字が小さいので持ち歩いて見るには不向きかと。

また、後半は須賀さんのエッセイなので、この本は事前の予習のための一冊とするのがよいかなと思います。

ヴェネツィア カフェ&バーカロで巡る、14の迷宮路地散歩

地球の歩き方が出しているこの本は、ベネチアとその近郊の町歩きのルートとその路地に遍在するローカルなレストランを取り上げており、読み物としてだけでなくレストラン選びのガイドとしても使えます。

迷路のようなベネチアの街は、短期間の初滞在だと自力でいいお店にたどり着くのは困難で、ともすればサン・マルコ広場裏の観光客向けのお店に入ってしまいがちです。しかし、この本があれば、地元の食通が通う隠れた名店に簡単にアクセスできます。

僕も初期の頃の滞在ではこの本がとても役に立ちました。ただのガイドブックではなく、各ルートにまつわる薀蓄やお店の店主とのエピソードなど生々しい情報に溢れているので、そんなエピソードとともに贔屓にしたいお店を見つけたいものです。

本のタイトルにある通り、イタリアの居酒屋的存在であるバーカロが多く取り上げられているので、お酒好きの方には特におすすめ。

僕もベネチアに行くときは毎度この1冊は手荷物に潜り込ませています。

僕の手元の本は2013年の増補版で14の路地版ですが、リンクが古い2008年の12路地のしかなかったのですみません。Amazonでは古本は扱っているようなので、一手間かかりますがリンク先からそちらを見つけていただければと。

RANGE

これは全くもってベネチア本ではないので蛇足ですが、ベネチアのフィーリエという音楽家たちについての記述があり、ベネチア文化の一側面をちょっと違った観点から見れて興味深いのであげておきます。

一時期、天才は1万時間の鍛錬で生まれるという説が流行りましたが、それに対して最新研究に基づいて異説を述べている本でして、それ自体非常に興味深いので自己啓発本、あるいは子育て本としておすすめです。

が、ここで取り上げたいのは比較的前半に記載のあるなぜベネチアの音楽産業が素晴らしい演奏家を生み出し、また往時の作曲家たに多いなる影響を与え得たのかに関する記述です。

詳しくは書籍を読んでいただきたいですが、その背景にはベネチアの性産業の隆盛とそれにより産み落とされた孤児たちを育てたオスペダーレ・デラ・ピエタのような孤児院での、現代の熱心な教育ママからすれば受け入れ難い魔法のトレーニングの成果であったということがその歴史的事情と共に語られます。

繰り返しになりますが、こちらはベネチア本としてでなくともおすすめの一冊です。

以上、ベネチア旅行を考えている方におすすめの本の紹介でした。ぜひ予習して水の都、いや、海の都を満喫してきてください。

ベネチアの記事一覧はこちらから。

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