ガイドブックなどで「世界一美しい」と呼ばれる広場は世界にいくつかありますが、その筆頭となるのがベネチアのサン・マルコ広場です。
ただ美しく広いだけではなく、人のいない早朝から音楽演奏が続く深夜まで見どころ満点の丸一日楽しめる場所で、世界で一番好きなところはどこ?と聞かれた時に、僕はまずここを思い浮かべます。
今年、3年ぶりにベネチアを訪問する予定ですが、この記事ではコロナ前の様子をレポートしておきたいと思います。 2022年夏の状況を追記しました。
目次
アクセス方法
水上バス(ヴァポレット)でサン・マルコ(S. Marco)駅またはザッカリア(San Marco-San Zaccaria)駅で下船し、ベネチアの象徴ともいえる鐘楼を目印に歩けば、すぐにサン・マルコ大聖堂とともに大きな広場に辿り着けます。
ちなみにGoogleマップの水上バスの運行情報がかなり正確なので、移動時にはぜひ有効活用してください。船の現在地まで表示されるのでめちゃくちゃ便利です。
水路を使わずに迷路のような街中を歩いても、至る所に「st marco」の方向を示す矢印があるので、それをガイドに進めばそれほど迷わずに到着できるでしょう。
ただし、建物が密集してGPSの精度が出ないため、スマホを頼りに歩いて近道をしようとしてもかなりの確率で行き止まりに引っ掛かるので要注意です。初ベネチアでの移動時間は、Google Mapで表示される所要時間の倍くらいかかるものと想定しておくのがよいと思います。
広場の見どころ
サン・マルコ寺院
828年にアレクサンドリアから持ち出され、ベネチアの守護聖人となったサン・マルコの聖遺物を祀る大聖堂です。長らく改修工事が行われていましたが、2019年の訪問時には、ようやくその全貌が見えるようになっていました。
正面中央上部に飾られている本を持った金の有翼の獅子像はサン・マルコを象徴するデザインで、ベネチア共和国の国旗にも使われており、街中の至る所、さらにいえばベネチア支配圏だった各地で見ることができます。
観光名所でもあり早朝から行列が出来上がります。
長蛇の列は、このとおり海辺まで続きます。実はこの行列、昼過ぎにはかなり短くなることが多いので、なるべく遅めの時間にトライするのが良いと思います。もしくは事前予約してファストパスで入るのが確実ですね。
上の写真では運河に面して日本の柱が建っていますが、右側の第1の柱にはベネチアの最初の守護聖人サン・テオドールの像(のレプリカ。本物はドゥカーレ宮殿内)が、左側の第二の柱にはテオドールに代わり守護聖人となったサンマルコを象徴する有翼の獅子の像が配置されています。この有翼の獅子はナポレオンがベネチアを支配したのち、一時フランスに持ち去られたという経歴を持ちます。なお、この2本の柱の間では18世紀頃には公開処刑が行われていました。
聖堂内は写真撮影が禁止されていますが、騎馬像が飾られている屋根上のスペースではOKです。この騎馬像は十字軍がコンスタンチノープルから勝利の証として持ち帰ったもののレプリカです(本物は堂内に展示されています)。
このあたりの歴史については、下記記事で紹介している塩野七生の『海の都の物語』が名著なのでぜひベネチア訪問前に一読をおすすめします。
【旅する前に読んでおきたい】おすすめのベネチア本まとめ屋根上からは広場の全景を望むことができます。足元が斜めで滑りやすいので運動靴で訪問しましょう。永らく改装作業が進んでいた広場南北のプロクラティエ・ヴェッキエ(写真右手、北側の建物)とプロクラティエ・ヌオーヴォ(写真左手・南側の建物)は、ようやく作業が完了し、24年現在では全容を見ることができるようになっています。ヴェッキエ(古い)とヌオーヴォ(新しい)の名前の通り、北側は16世紀初頭、南側は16世紀後半から17世紀中ごろにかけて作られ、地上階は現在と同じく商店、上層階は貴族の邸宅だったそうです。
写真奥の部分はナポレオンによってもともとあった教会部分を破壊して建てられたことからナポレオン翼と呼ばれます。ヴィチェンツァの美術館に展示されているグアルディの風景画にその昔の姿を見ることができます。
広場では昼間、鳩の餌を売っていたりするので、めちゃくちゃ鳩がいます(もちろん鳩への餌やリは禁止事項なのですが)。体に鳩を載せて喜んでいる観光客が大勢いたりしますが、衛生感覚が日本人とは違うので結構迷惑なんですよね。。上の写真にもいくつか写っていますが、お土産の屋台なども日が沈むまでは広場周辺にたくさん出ていると思います。
金に彩られた堂内の鮮やかさは必見です。堂内の宝物庫などを観覧するために通行料が取られるので、ちゃんと小銭を用意しておきましょう。
なお、22年の訪問では、アフターコロナで観光客の数もコロナ前とそれほど変わらない様子でした(中国が渡航制限中だったため観光客の人種割合は欧米人が多かったですが)。しかし再び改修工事が始まっており、写真撮影には適さなくなっていました。。
さらに24年7月の訪問時でもまだ正面入り口の一部が工事中でしたね。あと数年もすれば完了するのでしょうか。
時計塔
24時間表示が特徴の時間が分かりづらい時計台です。整然と並ぶ窓の回廊に連なってアクセントのあるデザインで印象的。ここにも有翼の獅子がいますね。この時計台の下をくぐった先には観光客向けのお店が多く並びます。裏側にも時計があるので見逃さないように。
鉄道駅から歩いて順路を辿って来ると、ここを抜けて広場に到着することになると思います。
無翼のライオン像
時計台の足元には、羽のないライオン像が2体あり、ひっきりなしに子供たちがまたがって写真を撮っています。調べても情報がありませんが、このライオンにも何かいわれがあるんでしょうかね。
ドゥカーレ宮殿
かつてのベネチアの政治の中枢、総督府だった場所で、ベネチアを描いた数多くの絵画でモチーフにされている超有名な建築物です。大聖堂と比べて並ぶ時間は短いので気軽に入れます。後述するコッレール博物館や図書館、考古学博物館などにまとめて入れるサンマルコのミュージアムパスがあるので、全部見たい場合には利用価値があると思います。所要時間は1時間ほどですかね。
天井一面に描かれた絵画がある500人広場と呼ばれる大広間(上の写真)や、超豪華な階段の間、有名なため息橋に連なる牢獄など、ベネチアの光と闇を感じることができる歴史的な建造物です。上の写真には写っていませんが、500人広場には世界最大の油絵とされるベネチア派の巨匠ティントレットによる「天国」という作品が壁一面に描かれています。
ちなみにこのドゥカーレ宮で総督を歴代勤めた名門ダンドロ家の邸宅をホテルにした世界的に有名なホテル ダニエリの屋上テラス(朝食会場)からドゥカーレ宮を眺めることができます。
ベネチアの絶対的ホテル、ダニエリのスイートルームステイ鐘楼
高さ96.8mのベネチアで最高層の建造物で、飛行機からも一目でわかるベネチアのシンボル。これも数多くの絵画で描かれた建物ですね。1902年に崩壊し、1912年に元の姿に忠実に建て直されました。崩壊時には奇跡的にけが人がでず、またがれきの中で割れなかったムラーノグラスが発見され、それがムラーノ島のガラス博物館に展示されています。
もう迷わないベネチア本島への入り方(陸路と空路を解説)エレベーターで展望台まで登ることができ、展望台からはベネチアの全貌を望むことができます。ここも時間帯によってかなり行列の長さが変わるので、うまくタイミングを見計らって行きましょう。時間予約もできるようですが、そこまでの大行列は見たことはないです。
上から見ると街の密集具合が一目瞭然です。火事が起きると致命的だということで、本島内のホテルの部屋にはポットが用意されていないというのも納得です。
ちなみに、ベネチアの夜はそれほど明るくないため夜空に星がきれいに見えます。ぜひ三脚を持ち込んで夜景撮影を楽しんでみてください。ただ、夜は光るおもちゃの売り子がやたらといて、あちこち照らしまくるので写真に変な光が映り込むのが難点です。。ああいうのはコロナ後も残っているんでしょうかね。>めっちゃいました。笑
コッレール博物館
写真のナポレオン翼の右側の回廊に入り口があります。ちなみに左側の赤い看板の下あたりを抜けていくと高級ブティック街にたどり着きます。
ベネチアの海洋史にまつわる歴史的資料の展示に加えて、時系列にテーマ別にまとめられて美術品が展示されているのでベネチアに興味がある人にとっては非常に興味深い博物館です。じっくり時間を取って訪問したいところです。夏場は金土は午後11時まで開館しているのでじっくり見るのに活用できると思います。
22年7月以降、フランツ・ヨーゼフ1世とエリザベート(シシィ)皇后フランツ・ヨーゼフ1世とエリザベート(シシィ)皇后が一時滞在した際に整備された居室などへもアクセスできるようになっています。
カフェで生演奏鑑賞
音楽鑑賞を楽しめるカフェは4カ所あります。広場の時計台の並びに2店、その逆サイドに世界最古と言われるフローリアン、そして海側にもう1店。個人的なおすすめは時計台側の2店、とくに若い演者が多い向かって左手のお店(グランカフェ・クアードリ)ですかね。双方の店が順番に演奏を繰り返すので、どちらかに座っていればお隣の演奏も十分に楽しめます。大勢の観光客が盛り上がっている雰囲気も楽しげです。
演奏の宴は昼間から深夜まで続きます。広場にいればドリンクを頼まなくても演奏を楽しむことができるので節約するなら座らなくてもOKですが、時間が許すならぜひともドリンクをオーダーして、前列に座ってじっくり演奏を楽しんでいただきたい。
Googleの口コミを見るとどこも散々な書かれようですが、後述の通り確かにちょっと高額です。とはいえ好きなだけ滞在して生演奏を楽しめるので、食後にドリンク1杯でのんびり過ごすなら十分に満足できると思いますよ。ここで深夜まで演奏を聴いていると最高にいい人生を過ごしているなと感じられます。
ちなみに24年の訪問時には女性の演奏者の方を初めて見かけました。ベネチアの水上船ヴァポレットの船のスタッフは女性比率が年々増えているのを感じます(最近は船の運転手にも女性を見かけるようになりました)が、ヨーロッパは近年、伝統文化領域でも女性の社会進出がどんどん進んでいきますよね。
世界最古のカフェ フローリアン
1720年に開店し、ガイドブックなどでは世界最古のカフェとして紹介されることも多いカフェ・フローリアンですが、実はオックスフォードのグランド・カフェ(The Grand Cafe)の1650年の方がずっと古かったりします。まあ、そもそもカフェの文化が生まれたのはイギリスですからね。。
ともあれ、昨年(21年)、コロナ禍により80%の売上低迷による閉店の危機に瀕しているというニュースがありましたが、22年の訪問時には無事、大勢の観光客で賑わっていました。(店の一部は物置のようになっていましたが・・・)
ベネチア派絵画の描かれた豪華絢爛な店内は昼間は順番待ち必至です。
夜は逆サイドで2店が順番に演奏をしていくので観光客が移動しながらずっと賑わっているのに対して、フローリアンは休憩を挟みつつの演奏なので比較的客が少なめです。
カクテル1杯あたり20ユーロほどの価格なので、正直、カフェ&バーとしてみると割高です。もちろんカフェなので、店内でエスプレッソを頼んでさっと出ていくことも可能ですが、せっかくなのでしっかり滞在して18世紀の雰囲気を味わっていきましょう。
広場のレストラン
回廊にはベネチアングラスやお土産の店が並びますが、いくつかレストランもあります。正直、他で良い店を探した方がよいとは思いますが、一度試しに入ってみたお店は悪くなかったので載せておきます。上の生演奏の写真を載せた時計台から遠い方のカフェの系列店ですね。
サンマルコ広場でのコンサート
夏場には、サンマルコ広場全体をコンサート会場にして、フェニーチェ劇場が主催するオーケストラのコンサートが開催されることがあります。僕が実際に参加したときの写真ですが、ほぼ現地の人ばかりだったのでおそらく日本人でこれに参加した経験のある人は相当少ないと思いますが、かなり良かったのでタイミングがあえばぜひ行ってみてほしいです。
午後9時の開演(夏場だと日の入り直前ですね)で、当日は朝から座席がセットされ、午後8時ごろにはサンマルコ広場へアクセスする各通路が閉鎖され、チケットを持っていないとここには来れなくなっていました。見ての通り数千人規模の座席が満員御礼ですので予約はお早めに。
チケットはフェニーチェ劇場の公式サイト(https://www.teatrolafenice.it/)で予約できると思います。
王の庭園
サンマルコ広場の南側には、王の庭園と呼ばれる広い緑豊かな公園があります。熱い日中は木陰で休む人や犬の散歩をする現地の人なんかを多く見かけますが、ここもナポレオンによって従来の建物を取り壊して作られた場所です。庭園からも隣接するイリーのカフェにアクセスできるようです。
王の庭園沿いには絵を売っている人や露店が多く並んでいるので、それを見て回るのも楽しいですね。沿岸部には船のタクシー乗り場もあります。JWマリオットやチプリアーニなどの離島の高級ホテルに向かうシャトル船もここから出ています。
逆流する水たまりも美しい夜の広場
有名なアックアアルタに遭遇するまでもなく、この沈みつつある街は満潮時には逆流する水が広場に広がることがあります。
通行エリアが阻まれてしまうのが難点ですが、反射する水面で映える写真撮影が期待できます。
冬場に本格的なアックアアルタが来ると1階が水浸しになってしまうこともあるのですが、そればかりは時の運ですね。それと比べればこのくらいの水たまりはなんてことはありません。
まとめ
ナポレオンやゲーテの言葉を借りるまでもなく、このサン・マルコ広場はやはり世界一美しい広場との呼称がふさわしいと思います。
とりわけ夜のライトに照らされた広場の美しさは筆舌に尽くし難く、写真では感じられない感動があります。できるだけ遅い時間までここで過ごせるように時間調整してみてほしいです。
また、個人的には朝の誰もいない広場もおすすめです。世界的な観光地なので昼間はめちゃくちゃ混雑しますが、朝9時くらいまではその面影がないほどほとんど人がいません。移動もスムーズですし、広場を独り占めしたいならぜひ早起きしてみましょう。