ベネチアビエンナーレ定点観測2013〜2019

* 2019年の情報を加えました。2019年の変化点は、アルセナーレ会場の入り口のブックストアに冷房が導入されていたのと、これまたアルセナーレ会場途中の軽食エリアの様子が変わっていました。そのあたりにビエンナーレユニバーシティというエリアもできて見所も少し増えた印象です。

イタリアのベネチアといえば、カーニバルもあれば映画祭もあり、世界一美しいと言われるサンマルコ広場にビーチリゾートもあればベネチアグラスも、、と有名どころだけでも枚挙にいとまがないのですが、僕にとってはなんと言ってもアートビエンナーレ。

隔年で開催されるこの祭典、その存在を知ったのは2011年で、その年に行くチャンスがあったものの無知の恥という事でまんまと行きそびれて後悔した2年後、2013年に初めて訪れて、これは毎回見に行こうと心に誓ってから早くも3回目の年(注 2017年時点)がやってきました。

ベネチアで日本人はそう珍しくもないものの、意外と会場で日本人を見かけないのが不思議なところです。有名な美術館は日本人だらけというのに。。なんというかそういうところも良いと思っています。美術館とは違って、よし、アートを見ようって感じではなくて、なんとなく観光のついでにふらっと立ち寄ってしまえる。そんなアートの祭典。

ご存知ない方のために簡単に説明すると、ベネチアビエンナーレは2年に一度、世界中の国を代表するアーティストとキュレーターが集い、自国のパビリオンでエキシビジョンが行われます。万博をイメージするとなんとなく近いでしょうか。

会期は年度によって違うようですが、西暦奇数年の5、6月から11月くらいまでというイメージです。もちろんお休みもあるので訪れる際は、展示会サイトで開催日程を確認して行ってください(基本的に月曜が休みだと思います)。

展示は2つの会場で行われます。もちろん島全体がアートの雰囲気に包まれるのですが、ジャルディーニ会場という大きな公園に主要国がそれぞれの国が展示するための建屋を構えている会場と、アルセナーレ会場という造船所の大きな倉庫にジャルディーニに建屋を持たない国々が混成して展示される会場(ただし、イタリア館と中国館はこちらにあります)に分かれており、双方の距離は800メートルくらい離れているので結構歩きます。

特にジャルディーニの方はどでかい公園なので、過ごしやすい地中海性気候とはいえ、炎天下でかなり疲労するので、できれば一日で全部回ろうとせず、日を分けてゆっくりまわるのがオススメです。そして街中を観光すると時々出くわす場外展示などにも入ってみてください。中には展示の為に私邸を解放していて、古いベネチア様式の館の雰囲気を味わえたりと非日常体験ができます。

2つのメイン会場 ジャルディーニとアルセナーレ


こちらがジャルディーニ会場入り口 入り口手前にチケット売り場があります。

残念ながらGoogleマップをみても入り口がどこかわからないのですが、ジャルディーニ会場の入り口はおおよそ上の地図のあたりまで行けば見つけられると思います。多分トレント通りとある道に沿ってチケット売り場と上の入り口が連なっています。ヴァポレットでジャルディーニビエンナーレという駅を目指すのがわかりやすいですね。船着き場からはすぐ目の前です。


アルセナーレ会場 この道の奥の門の向こうにチケット売り場があり、左側の建物が会場で見づらいですが奥に入り口が見えます。2013年の時はこの写真の後ろにチケット売り場があって炎天下かなり並びましたが、2015年からこの配置に。今年は会場入り口手前にミュージアムショップ的なものもできていました。逆に奥の方の出口にあった買い物エリアは無くなっていました(2019年にはこじんまりと売り場は復活していました。)。

アルセナーレも入り口が地図ではわかりづらいですが、この地図の目印をめがけて行けばきっと大丈夫です。ここまで行けば例年看板が立っていて、人の出入りもあるので。

アートに興味のない方にあえてどちらがオススメかというとすごく悩みますが、ぜひアルセナーレ会場に行ってみてほしいと思います。むき出しのレンガ倉庫にあれだけの物量がある展示会はそうそうないので、非日常感が味わえるのではないかと。話のネタにということであれば、ジャルディーニで日本館といくつかのパビリオンを見るというのも悪くないとは思いますが。

なお会期が長いこともあり、行くタイミングによっては閉まっているパビリオンがあったり、あるいはこの期間を利用して会期の始めと後半で姿が変わるような展示もあったりしますので、何が見られるかは多少の運も必要です。

アートビエンナーレの看板

ベネチア島の中、いろんなところに赤で目立つ特徴的な三角看板が置いてあります。裏面には地図もあり、この看板を目印に会場へと向かいます。会場は島の東の外れの方にあるので、ヴァポレットで行くのがオススメですが。サン・マルコ広場から海沿いに歩くとカーニバルの衣装を着た道化師やら出店なども並びなかなか楽しめます。


2013年 第55回 The Encyclopedic Palace 百科事典の城


2015年 第56回 All the World’s Futures 全世界の未来


2017年 第57回 Viva Art 芸術万歳


2019年 第58回 May You Live In Interesting Times 数奇な時代を生きられますように

スポンサーの一覧らしき看板がジャルディーニ会場入ってすぐのところに置かれているのでこちらも並べてみます。


2013年


2015年


2017年


2019年

同じフォーマットに載りつつも毎回違う様子が垣間見られるでしょうか。

展示ダイジェスト

非常に多くの作品が並ぶ中で、印象深かったものをいくつかピックアップしてみようと思います。


2013年 Paweł Althamer Venetians

アルセナーレ会場の中ほどの広い空間に展示されていたこの作品。型取りされたリアルな人の顔(実際のベネチア人から)に、風化したようにも、変形したようにも見えるプラスチックの体を与えられた等身大のオブジェが何かを暗示している空間。とても印象深かった。今思えばヴィーゲラン公園に近いものを感じますね。見たときに、うん、次からも絶対来ようと決める決定打となった作品です。


2015年 日本館 塩田千春 The Key in the Hand

日本館は毎度クオリティの高さを感じますが、塩田さんのこの舟と糸と鍵のインスタレーションの破壊力はすごかった。光のカーテンという表現がふさわしい。真っ赤だけれども刺激的ではなく、むしろ延々とこの空間にいたいと思わせるやさしい光。だけどすごくエネルギーを感じる。ネットワークのパワー。ただ糸が張り巡らされているだけ(もちろん計算されているんでしょうけど)というのに、こんな空間を作り上げることができるんだと衝撃を受けました。こちらのサイトでメイキング映像も見られます。


2017年 日本館 岩崎貴宏 逆さにすれば、森

水面に映る広島の厳島神社の模型。台風で破損した傷跡も生々しく再現されていて、感じさせるものがあります。真ん中の服の塊と、この写真には写っていない奥の展示も、ふむ。と考えさせるものでした。ぜひ現地で見てください。


日本館はこんな建物です。野ざらしの1階に2階の真ん中に穴が空いているというなんとも使いにくいアーティスト泣かせの構造です。この扱いづらさを逆手に活かしてどんな展示空間にするか創造力が試されるというのが特徴。ジャルディーニ会場入り口をまっすぐ進み右手にありますので、まずは日本館をという方は参考までに。ちなみに2013年に日本館は特別賞を受賞していますが、私、2013年は色々時間配分を失敗してしまい日本館をほぼ素通りしてしまったので中身をちゃんと見ておらず、、でした。。。


2015年 中国館 陸揚の作品

曼荼羅に出てくるような仏教的存在に扮した西洋人たちが大真面目にカッコつけてるムービー。曼荼羅風に場面が切り替わっていきますが、なんともシュールで笑えます。真ん中左のヒゲのお兄さんがキリストを想像させる風貌で、なんとも冒涜的というか挑戦的というか。そういうちょっとした毒もありつつ。なかなか見ごたえのある映像でした。2017年の中国館は影絵がテーマでした。


2015年 オーストラリア館 軍服でできたお面

この時のオーストラリア館には、博物館風にいろんなタイプの展示があって考えさせられました。一見は百聞にしかずということでいくつか並べます。


紙幣でできた鳥の巣


紙幣を使った押し花(?)


パンでできたオブジェと地図


2015年 ゲルマニア館(どこ?) こんな空間でシューティングゲーム風の映像が流れていました。他にもやはり映像系は色々あります。映像そのものもさることながらやはり見せ方に趣向が凝らされています。


2017年 ロシア館 AIによってネット上でやってはいけない行為をしてしまったがためにブロックされてしまった人らしい。監視員の人が持っているタブレットで見ると熱量を発しているのが見えます。ロシア館は毎回ハイクオリティな展示で見所満載で楽しみにしています。


2015年 アルセナーレ会場 う、うん。そうだよね。紙くしゃっとすると鉄棒が曲がって見えるよね。うん、不思議だね。でも、どうしてもこれ展示しないとだめだったのかしら?


2015年 アルセナーレ会場 10ユーロがついている冊子に積み上げられた紙幣。さて、あなたならどうしますか?


2017年 ノルウェー館 Mika Taanila

コラージュはまあデザインを志した人なら誰もが試みたことがあるであろうメジャーな手法ですが。1冊の本を使ってというのはそういえば見たことないなと思いまして。


2019年 ジェルディーニ会場 企画展示エリア

ゆっくりと広がっていくワイン色の液体をロボットがひたすらかき集めていくというインスタレーション。

大スケール作品群

ちまちました作品も結構ありますが、やはりこれだけ大きな会場を活かしたスケール感のあるものが見たい。
ということで、大型の展示をいくつか並べてみます。


2013年 確かフランスパビリオンの艾未未 (アイウェイウェイ)の作品。この年、艾未未 は別な場所で監獄に収監された展示なんかもやっていました。


2013年 アルセナーレ会場 カンボジア系の神様でしょうか。これも大空間を活かした展示


2015年 アルセナーレ会場 大砲と、奥にドラムが縦に積み上げられています


2013年 スペイン館 圧倒的物量の土砂 ただひたすら埋まっていました


2015年 Xu Bing The Phoenix 造船所の舟置き場を使った展示、出撃準備完了って感じ


2015年 イスラエル館はタイヤで包まれていました。


2015年 ノルウェー館 廃墟化しているのかとびっくりしたら、こういう展示でした。


2015年 展示そのものではなく、アルセナーレ会場横の通路がこんなボロい麻布で覆われていました。(実はこれもインスタレーション?)なかなか圧巻。

定点観測 アーセナル会場の一番奥の間


2013年 香辛料とサンドバッグ スパイシーな匂いがしました。なんとなく覚えています。


2015年 スピーカー それぞれが音を出していました。どんな音だったかは記憶にありません。。

2017年 巨大スクリーン 右から左に画面が動きながら映像が流れていきます。ニュージーランドの展示と書かれていました。


2019年 名言のプリントとモノが収められたクリアケースが並ぶ空間に。会場で気づきませんでしたが、天井に意味ありげに数字が並んでいます。

こんな感じで同じ会場で違う展示が行われるので、記憶にある場所に立ったときに2年前、4年前を思い出してなんだか不思議な感覚になります。10年後、20年後、薄れていく記憶と重なってどんな風な景色が見られるのでしょうか。そんな将来に思いをはせるのもまた一興です。

食事処

ジャルディーニもアルセナーレもゆっくり回れば半日〜1日は過ごせてしまえるので、朝から来たらお昼をどうしようかと悩みますが、もちろんいずれの会場にもいくつかレストランや売店があるのでご安心を。ここでは特徴的なものをご紹介。


ここはパビリオンではなく、ジャルディーニにある食事処。目がチカチカする非常にインパクトのある空間ですが、なぜだかここに来るとベネチアに来たなという感覚を覚えます。


このいかにもレストラン風の場所(というかレストランですが)は、アルセナーレ会場で2019年から新しくできた場所です。味もまあまあでした。いつもパニーニサンドとかでサクッと軽食で済ませていましたが、しばしのんびりしてみました。

アルセナーレの方はどんどん先に進むタイプの導線ですが、ジャルディーニの方は大きな敷地を生かして、公園があったり遊具のあるエリアもあるので、子供連れでも楽しめると思います。夏場は雨も降らないので、ピクニック気分でいい休日が過ごせると思います。なお、特に自然豊かなジャルディーニの方は夏場は蚊がいるので、虫除け・虫刺されの薬は持っていくのをおすすめします。

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