世界で見かけたロダンの「考える人」コレクション

ロダンの作品は独特なポージング、筋骨隆々の男性と流麗な女性の肉体美、そして力強い足指の表現などなど、多くの特徴的な形態美を備えています。世界中の美術館にさまざまな作品が収蔵されていますが、いずれの作品も一目でロダン作品だとわかる異彩を放っています。

中でも今回特集する「考える人」は、世界一有名な銅像と言っても過言ではないでしょう。

名前を聞けば、きっと世界中のほとんどの人がこの座って打ちに向けた拳に顎をつけるポーズを取ってくれるのではないでしょうか。しかし、誰もが知っているはずのブロンズ像ですが、右手を捻って左足についていることは意外にもみなさん知らなかったりしますよね。

テレビなどで見かけることはあっても、実際に本物をまじまじと見たことがある人は意外と少ないのかもしれません。が、実はこの「考える人」像は、世界中に数多く”本物”が存在しており、旅先で美術館などに足を運ぶと、結構見かけることがあります。

そんな旅先の予習として、ロダンの考える人についてこの記事では解説してみます。

ロダンの考える人とは

国立西洋美術館の「地獄の門」

フランス語では、Le Penseur。英語では、The Thinkerと呼ばれる誰もが知るあの像です。当初は詩人と名付けられていたそうです。

世界でももっとも有名な彫刻家と言っていいフランスのオーギュスト・ロダン(1840-1917)の作品の中一つである「地獄の門」の門の上で思索する人の姿の像が元の作品です。

地獄の門は、1880年にパリに新設される装飾美術館の入り口の門のために構想された作品で、ダンテの神曲にインスピレーションを受けて作られたものとされます。この作品に関連して生まれた作品は考える人以外にも多くあり、ロダンファンとしては、世界に7つあるというこのブロンズ像は必見のものの一つです。

「考える人」は世界中の様々な美術館や博物館の中に収蔵されていますが、1881-82年に作られた原型によるものとは別に1902-03年に作られた拡大作もあります。ロダンの死後に鋳造されたものを含め本物だけでも20体以上あり、レプリカらしきものを見かけることもよくあります。

世界中にいるロダンの「考える人」たち

ここからは実際に僕が写真を撮ってきた世界の考える人を並べていきます。

日本の考える人

国立西洋美術館

上野の国立西洋美術館では、地獄の門とは逆サイドの奥の方に静かに鎮座しています。木々を背に座る佇まいは確かに何かを沈思している様子で趣があります。国立西洋美術館の作品記述によると、この作品はロダンの死後、1926年に拡大作の型を使って鋳造されたもので、松方コレクションんで有名な松方幸次郎氏が購入し、1944年にフランス政府が接収、その後、1959年にフランス政府より寄贈、返還されたものだということです。

京都国立博物館

京都の国立博物館は本館の前の広場にぽつんと配置されています。秋の紅葉の色づきに合った厳かな雰囲気を感じます。

国内には、他にも長島美術館、西山美術館、静岡県立美術館などにもあるようです。

世界の考える人

パリ|ロダン美術館

パリにあるロダン美術館の考える人は、フランスらしく見事に整形された木に囲まれた高い台座の上から見下ろすように配置されています。

ストラスブール|ストラスブール現代美術館

世界遺産の街、ストラスブールの現代美術館で見かけた考える人は他のところで見てきた考える人よりも一回り大きく感じました。少しいつも見るものよりも若干ふくよかな印象もありましたが、床に展示されているからそう感じたのかもしれません。この高さでの拡大作の展示は珍しく、かなりの迫力があります。

ナント|ナント美術館

フランスのナントにあるナント美術館のものも原型による鋳造物との記述がありました。こちらは石膏像。横にならぶ像が大きかったのでひっそりとした印象。ずいぶんダメージのある像でしたが来歴が気になります。

ワシントン|ナショナルギャラリー

ワシントンのナショナルギャラリーには、ロダンやドガの作品が集中的に集められたスペースがあります。ここの考える人はwikipediaにはロダンの死後の鋳造とありますが、展示パネルには1901年の鋳造との表記がありました。

ニューヨーク|コロンビア大学

ニューヨークの名門コロンビア大学の哲学科校舎前の芝生エリアに佇む考える人。晴れた日には立入禁止と書かれたこの芝生上で日向ぼっこする学生たちがちらほら。

ニューヨーク|メトロポリタン美術館

メトロポリタン美術館のヨーロッパ彫刻・装飾芸術 (European Sculpture and Decorative Arts)のエリアにも多くのロダン作品が飾られていますが、やはりその回廊の中央に展示されているのは考える人でした。

フィラデルフィア|ロダン美術館

フィラデルフィアのロダン美術館の外門のさらに外、道路沿いに設置されています。

奥の美術館入り口には地獄の門の展示、そして館内の出口付近にも原型サイズの展示があり、都合3種類の考える人がいました。

ボルチモア|ボルチモア美術館

僕が訪問したタイミングでは一時的に展示されていませんでした。館内を探し回っても見つからず、係員さんに聞いたらいつもは上の写真のところに展示されているのだけど、とのことでした。残念。。

シンガポール|セントーサ島

セントーサ島のユニバーサルスタジオ近くの考える人。大概台座の上にいるのでなかなかこの高さのアングルを撮れるのは珍しいと思います。

シンガポール|街中

これ、どこで撮影したのか定かではないのですが、割と中心部の街中で見つけたものです。

コペンハーゲン|ニイ・カールスベルグ・グリプトテク美術館

デンマークの首都コペンハーゲンにあるビールメーカー、カールスバーグ社が運営する美術館には数多くのロダン作品や彫刻作品が展示されています。ここの考える人は、この写真のものともう一つ美術館の外にも飾られており、そちらの方が有名です。

ベルリン|旧国立美術館

こちらの考える人もワシントンのナショナルギャラリーと同じくロダンの死後に鋳造されたものだそうです。美術館の展示室中央に鎮座しておりました。作品鑑賞する人の間で何を考えているのでしょうか。

ドレスデン|アルベルティーヌム

1800年以降の彫刻コレクションの中で思索にふける石膏の考える人。この一角には他にも石膏像のロダン作品が並びます。

おまけ:よく見るその他のロダン作品

ロダンの作品の中には、考える人以外にも世界中で目にする作品がいくつもありますので、ここでいくつか挙げておきます。

THE KISS

「接吻」の像ですね。これもロダン作品として非常に有名なものの一つ。石膏のこの像は数は少ないながらも時折見かけることがあります。

THE AGE OF BRONZE

「青銅時代」という青年像。ロダン制作の等身大の像として最初のものという歴史的価値のためでしょうか、この像は有名な美術館では非常に高頻度で見かけます。

EVE

「エヴァ」と名付けられたこの像は、もともと「アダム」という作品とともに「地獄の門」の脇に配置されるために製作されたそうですが、経済的な理由により断念されたそうです。この像も非常に高頻度で見かけます。上野の国立西洋美術館では、「地獄の門」をはさんで「アダム」の反対側に展示されていますね。

まとめ

世界の美術館を巡っていると、どの国の大きな美術館にも展示のある作家が何人もいることに気が付きます。ピカソ、ルノワール、セザンヌ、ピエール・ボナール、モネ、マネ etc 数え上げると枚挙にいとまがないですが、19世紀末から20世紀初頭のこれらの作品群を所蔵していることがある種、その美術館の権威につながっているようなところが面白いなと思います。

これらの絵画芸術家と並ぶ同時代のロダン作品は、一際多くの作品の展示を見かけるような気がします。1点ものの絵画とは違って、鋳造で複製可能というのがそういった美術館のコレクションを厚くするために、そしてロダンの名声を高めることに寄与しているのだろうと思います。

そのおかげで、この記事で並べた「考える人」のように、別な場所で同じ作品を見て回るという道楽旅を楽しむことができます。

あなたもお好みの「考える人」を探しに旅に出てみてはいかがでしょうか。

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