イタリアの海岸風景といえば南部の世界遺産アマルフィが世界的にも有名ですが、北部にもアマルフィにも勝るとも劣らない海岸風景を持つ世界遺産があります。日本人的にはちょっと発音しづらい名前もあってか、チンクエ・テッレは以前は旅行会社のパンフレットに載っていることも少なく、知る人ぞ知る穴場的な観光スポットでしたが、最近はイタリア旅行の情報を調べているとしばしばメイン扱いで見かけるようになりました。
僕が初めて訪れた10数年前はネットにもほとんど情報がありませんでした。が、イタリア人からおすすめの名所としてすすめられるがままに行ってみて、その美しさに息をのんだ記憶があります。
険峻な山道を登ったり降りたりするのは夏の日射しの中、地獄のようでしたが、歩き切った感動はひとしおです。今回、南仏からイタリアに抜けるルートを通るついでに、前回の滞在時には通らなかったルートもリサーチしてきたので、記事にまとめてみようと思います。
目次
チンクエ・テッレとは
イタリア語でチンクエは「5」、テッレは「村」ということで、その名の通りイタリア北部、リグーリア地方の海岸部に位置する5つの村の総称です。入り組んだ湾に面して色とりどりの建物立ち並び、それぞれに個性的な5つの村がまとめてユネスコの世界遺産に登録されています。
チンンクエ・テッレへのおすすめルート
5つの村にもホテルはありますが、簡易宿ばかりな上に夏場の観光シーズンなどは価格がべらぼうに高騰するので、近郊都市のジェノヴァもしくはラ・スペツィアに宿泊して、電車で訪問するのがおすすめです。
ジェノヴァから
ジェノヴァの市内東方部にあるターミナル駅Genova Brignole駅から電車が出ています。モンテロッソやリオマッジョーレまで乗り換えなしで行けるローカル線でおよそ1時間ほどの旅程になります。ジェノヴァ自体も見所の多い街なので、ジェノヴァ観光のついでに、日帰り旅で1日使ってチンクエ・テッレにも足を伸ばす旅程を組むのが良い気がします。
ラ・スペツィアから
ラ・スペツィア(La Spezia)は、チンクエ・テッレへの玄関口として多くの宿やレストランで賑わう中堅湾岸都市です。ここから最も近い東端のリオマッジョーレまでは電車で10分ほどなので、時間的にはジェノヴァよりも優れています。
5つの村の特徴と巡り方
チンクエ・テッレの5つの村を結ぶローカル電車がおよそ15分間隔で運行しており、村落の間の乗車時間は2、3分程度の距離なので、電車を駆使すれば村内を訪れるだけなら全て回っても1日あれば十分です。
しかし、5つの村を結ぶ山岳路を歩いて回ると、目まぐるしく変わる山と海の景色を堪能できるのでぜひ時間をとって山歩きに挑戦してみてほしいです。ただし、かなり険峻な道を歩くことになるためトレッキングの準備は万全でいきましょう。村のあちこちにビーサンでの進行禁止という貼り紙を見かけます。
さて、それではお待ちかね、5つの村落を西端のモンテロッソから東に進む順に紹介していきます。
モンテロッソ Monterosso
5つの村の西端。ジェノヴァ方面からの玄関口になるのがモンテロッソです。
駅舎を出ると目の前のビーチ全面を埋め尽くすビーチパラソルが広がっており、ザ・観光地という雰囲気。駅前に土産物屋や飲食店も並ぶので、トレッキングを楽しむならここでしっかり水など調達しておきたいところです。
ちなみに10数年前の写真がこちら。当時も人出はすごかったですが、現在の様子と比べると閑散とした印象です。やはり観光地化の流れは進んでいるようですね。
隣の村ヴェルナッツァへは、この写真の道をまっすぐ進んで行くとトレッキングルートがあります。が、およそ2時間弱歩くことになるので覚悟しましょう。途中までは海岸線に沿って平坦な道が続きますが、途中からは山道が続きます。
ヴェルナッツァ Vernazza
チンクエ・テッレの写真で最もよく見る構図がこのヴェルナッツァの写真ですね。名前は聞いたことがなくても、この風景を見たことあるという方は多いのではないでしょうか。この写真はモンテロッソに向かう山道を少し登ったところにある展望エリアから撮影できます。
ビーチは海から囲い込まれたところにあるので波はなく、海水浴を楽しむ人でごった返しています。少し水は濁っていて磯の匂いが強めですが、水面を覗き込むと魚も泳いでいます。
ヴェルナッツァとコルニリアの間の山道も歩きごたえがあります。およそ1時間弱の道のりです。この山道側からもこのようになかなかいい写真が撮れると思います。ずっと奥に見える湾岸部がモンテロッソですね。
山道は昔と比べてかなり整備されており、このように崖道は柵も用意されていたりします。が、一部階段が壊れていたり、柵のない危険な場所もあるのでなるべく軽装で、絶対に運動靴かトレッキングシューズで向かってください。夏場は大量の水も必須です!
ヴェルナッツァとコルニリアのちょうど中間地点でバーが運営していました。
山道からの写真です。右手前の村がコルニリア、左奥の湾岸の村がマナローラです。このようにかなたに見える村の景色に出くわすと不思議な達成感を感じます。
コルニリア Corniglia
コルニリアは、電車で行く場合も駅から村まで行くには心臓破りの400段の階段を登らなくてはなりません。ミニバスが出ているようなので、体力に自信のない方は利用するのも一手です。(チンクエ・テッレカードという電車・バス乗り放題のチケットが売っています)
村落自体は、中に入ってしまうと裏路地ばかりで特別見どころはない感じですが、ヴェルナッツァ方面のトレッキングルートを歩くと全貌が見えるポイントがいくつか見つかります。
村から少し外れて歩いてみるとこの写真のような民家や段々畑など自然と調和した山の風景に出会えます。
海側に向かえば急勾配の下には小さな湾もあり、海遊びをしている人がやはり大勢いたりします。
マナローラ Manarola
この村もかなり写真映えのする景観です。湾の奥にある展望エリアに進むと、このように湾の全貌を映す写真が撮れるのでかなりおすすめ。
展望台はこの写真の奥の湾岸に沿って続く道の先にあります。左手前に映る岩が飛び込みスポットになっていて、次々と海に飛び込む人がいました。
駅から湾のあたりまでは少し歩きますが、多くのお店が連なっていたりするので食事やお土産選びなども楽しめるかと思います。カラフルな街並みを眺めるのも楽しいですね。
モンテロッソの駅から村へは西側に向かうトンネルを進みます。この写真を撮影した東側のルートは後述する崖崩れの修復作業のため閉鎖されているので、時間のない方は間違えてこちら側に進まないように注意しましょう。
ぱっと見、東に進めるように見えますが、正面の岩の奥で道は閉鎖されています。この先は愛の小道と呼ばれる、リオマッジョーレまで続く湾岸ルートの観光スポットがあるのですが、そのルートを通ることはできません。
リオマッジョーレ Riomaggiore
リオマッジョーレ駅舎出てすぐの階段。「dell AMORE」との記述が見えますが、これが上述した「愛の小道」のことです。2012年に崖崩れがあり、その復旧工事は2022年夏時点でもまだ終わっておらず、やはりこちらからのルートも閉鎖されておりました。
村へは長いトンネルを抜けて進みます。
他の村落でも見られる景色ですが、カラフルな建築、緑の特徴的な窓のイタリアらしい景観に心躍ります。この村は比較的内陸部まで広がっていて、山に続く村落の様子が見られるのが特徴的です。観光客向けのお店も多く並びます。
少し坂道を登っていくと、上には石造りの城と展望台もあるので、時間が許すなら行ってみてもよいかもしれません。それほど絶景というわけではないので優先度は下がります。
チンクエ・テッレ観光の注意点
まず、何度も書いた通りトレッキングを楽しむなら、必ず運動靴と大量の水は用意しておきましょう。山道は登ったり降ったりが連続するので普段歩かない人には相当こたえるはずです。日除けのない場所も多いので紫外線対策も忘れずに。
トイレは各駅舎についていますが、電車の到着直後は行列ができるのでタイミングは見計らっていきましょう。トイレを使用するには係員に使用料を払う必要があるので小銭を忘れずに。
まとめ
改めて写真を見返してみると、やはり絶景写真が大量に出てきました。とてもブログでは使いきれません。
湿度の低い地中海性気候とはいえ、夏場はさすがに南仏から北イタリアのこのエリアは高温多湿で日差しの中歩き回るのは結構こたえます。が、それでも頑張って山登りをした甲斐があったなと思える色とりどりの景色に出会えるので、ぜひイタリア旅行の選択肢の一つとして取り入れてほしい旅程です。