※2021年1月現在、工場見学は休止中です。再開時期などの詳細は記事中にある公式URLの中にある問い合わせアドレスにご確認ください。
リヤドロは、世界中にファンがいる高級陶磁器(ポーセリン)人形の代名詞とも言えるブランドです。滑らかな曲線とただ可愛いだけでなく豊かな表情が特徴で、ひと目でリヤドロのものとわかるその美しさに魅了される方も多いのではないでしょうか。
そのリヤドロの作品が生み出されているのは、スペインのアンダルシア地方、オレンジで有名なバレンシアです。バレンシア市の中心から少し離れた位置に工場を構え、そこから世界中に人形たちが旅立って行きます。
そんなリヤドロの本社工場ですが、実は一般向けに工場見学のツアーを無償提供しています。僕も5年ほど前にこの工場見学に参加したことがあるのですが、これはかなりおすすめなので、ちょっとコツのいる予約方法や工場へのアクセス方法、そしてツアー内容など解説しておこうと思います。
目次
工場見学の予約方法
リヤドロの工場見学はリヤドロの公式HPから予約ができるのですが、厄介なことにリヤドロのサイトに行くと日本の専用サイトにリダイレクトされてしまいます。日本語サイトには工場見学のリンクがないので、僕も当時、予約ページに辿り着くのに相当苦労しました。。
ということで、直リンクを貼っておきますが、残念ながらこの記事の執筆時点ではコロナの影響により工場見学ならびに併設する美術館は閉館中です。
https://www.lladro.com/en_us/visit-us
※もし上記リンクからも日本語サイトに飛ばされる場合は、ブラウザの言語設定を英語/スペイン語にするなど、リダイレクト処理を無効化する方法を試してください。
予約方法は再開後に詳述しようと思いますが、簡単に流れを書いておきます。
工場見学は、スペイン語、英語、ロシア語に対応していますが、事前にいずれかの言語の枠を予約することになります。
なお、audiovisual guideに日本語とありますが、これはガイドツアーの冒頭にムービーを見るのですが、これに日本語のものが用意されているということで(日本人だけの団体ツアーだったらこれを見せるんでしょうね)、日本語の翻訳ガイドなどがある訳ではないのでご注意ください。
予約期日が近づくと、当日のガイド担当の方から当日の緊急連絡先などの確認メールが来ますので適宜対応しましょう。
工場へのアクセス
さて、工場の場所ですが、市内中心部からは少し離れたところにあります。最寄駅からも少し距離があるので、市内からタクシーで行くのが楽かなと思いますが、僕は地下鉄で向かったので簡単にガイドを書いておきます。
最寄駅は Alboraia – Peris Aragó
市内中心部からは北北東に向かう地下鉄に乗ってください。中心部は結構混み合っていましたが、どんどん人が減って不安になりますが、大丈夫。
駅舎は赤に白字でmと書いてある紺色の建物ですね。駅を出たら西北西に向かう幹線道路を進みましょう。住宅街を抜けてラウンドアバウトを二つ超えると工場です。15分ほどの道のりだったかと思います。
奥の白い建屋がそうですね。LLADROの文字が見えるのでこの辺まで来ると安心です。
入り口にはこちらのロゴと大きな作品があります。テンションが上がりますね。
ファクトリーツアーに来たと言ってセキュリティゲートを通してもらいましょう。この左手の待合室に連れていってもらえます。
待合室はこんな感じ。少し早くついたのでテーブルに置かれているカタログなど眺めながら時間を潰します。
誰も来ないのでひょっとして一人かも、ラッキーと思ってたら、直前になってインド人の金持ちそうな大家族が。まあ、しょうがないですが、ちょっとうるさかった。。
時間になるとガイドのお姉さんがやって来て、ツアー開始です。こちらの建物に向かいます。中にはガイド用の工房と過去の作品が飾られたショップも兼ねた美術館があります。
工場見学の内容をダイジェスト
さて、ツアーの内容ですが、残念ながら写真撮影は禁止だったので写真はありませんが、説明を受けたメモの内容をざっと載せておきます。
まず、ツアーの最初に個室に通されてリヤドロ社の歴史などのムービーを見ます。英語のツアーだったのでもちろん英語版です。日本語のDVDが置いてあったので日本人客だけだったらそれを見れるんじゃないですかね。英語が苦手な方は事前にお願いしておくとよいかもしれません。
ムービーが終わると工房へ。
厳密には、本当の工房というよりはガイド用に用意された場所のようで、各作業工程を担当する職人さん(職歴40年超!)がそれぞれのエリアで作業をしているのをガイドさんの説明を聞きながら見学できます。
非常にフランクな雰囲気で、一方的に説明を受けるだけではなく、随時質問を受け付けてくれて、職人さんにも通訳して答えてくれます。英語(スペイン語)が得意な方、ポーセリンアートに興味のある方はめちゃくちゃ楽しいと思います。
ということで、ここからは僕が気になって聞いたことがかなり入っているので、通常のツアーより情報量多いので必読です。特に英語が苦手な方でも見学の予習に読んでおけば理解が深まるのではないかと思います。
原型工程
まずデザイナーが作品の原型を作りますが、原型の出来上がる段階が展示されています。粘土を使い、最初はラフにガタガタな形状から、だんだんスムーズなサーフェス(表面)が出来上がっていきます。
冒頭のゲートの奥にピラミッド型の建物が見えていましたが、デザイナーさんはあそこで勤務しているそうです。
型取り工程
原型が完成すると、量産するために分解して石膏で型取りされます。この分解した時の部品点数は最大で382部品という手作業で組み上げるには膨大なものだそう。宝船の巨大な作品でギャラリーに展示してありましたが、16万ユーロとこれまたとんでもない値段がついておりました。
型取りのイメージが沸きにくいと思いますが、気になる方は「フィギュアの作り方」とかでググってみてもらえれば、素材は違いますが手順はおおよそ似たようなイメージなのでご参考に。
1つの型あたり24体までしか使わないそうで、図面などはなく、型も販売終了後1年後には廃棄してしまうので同じデザインのものは2度と作れないそうです。
彼らの人形が作品と呼ばれる所以です。図面もなく型も残さないというのはちょっとびっくりでした。勿体無いですが再生産できないというのも希少性を高めているんですね。
(なお、各作品2000体しか作らないと聞いた記憶があるのですが、メモには残っていなかったので、どなたか訪問して来たらコメントで教えてもらえると嬉しいです)
この型取りの際のポーセリン(磁器)の配合にノウハウがあるということで、およそ30分ほどで表面が固まり、その段階で型から取り出すと中身を空洞にすることができると。ふむふむ。
組立・整形工程
型から取り出した部品は、湿らせた状態で型のランナー(素材を流した溝の部分)やバリ(型と型の間にはみ出した余分な部分)を取り除きます。
そして部品同士を結合していきますが、内部の空洞が繋がるように各部品を調整しながら、職人さんがポーセリンを塗っていきます。量産品とはいえ、この作業でそれぞれの個体に個性が出て来ます。職人さんの腕の見せ所です。
出来上がった個体には最初の1000体には1000、1001から先には2000とナンバーが書かれるということでした。
そこから24時間、22-23度で温度管理された部屋で乾燥させます。
焼成工程(素焼き)
乾燥後、焼き入れです。火をかけて固めますが、この時およそ15%ほど縮むそうで、一回り小さくなるイメージです。焼き上がり前後を見ると色味もちょっと変化します。
焼く時には形状が変わらないように、サポートを付けますが、収縮があるのでこのサポートにもポーセリンを使います。かなり大きな塊でした。繊細な表現もあるので、しっかり支えるために大きく作るのだそう。
色付け工程
焼き上がると色付けです。この工程は当時、職歴42年という超ベテランの職人のおばさまが担当されていました。絵の具は4000色もあるそうですが、いずれも危険な素材は使っていないということでマスクなどは必要ないのだと言っていました。
色塗りは、ぱっと見、とてもラフに見える筆さばきで、点々と色をのせていきます。目の部分がちょっと特殊で、ポーセリン入りの塗料で目玉が飛び出るように色を付けます。今度、リヤドロの人形を見るときは、ぜひ、店頭で目に注目してみてください。
仕上げ・釉掛け工程
細かい装飾品作りも見ものです。細かい花の形状などは、型取りではなく、職人さんが一つ一つ手作りで粘土細工のように作っていきます。パテを触らせてもらいましたが、かなり固めでした。
細かい部品を取り付けたら、最後に水色の釉薬をかけます。その色味で完成具合がわかるそう。そして最後に本焼きされて完成ですね。
以上、ざっくりとですが見学する工程の流れでした。これは実際の様子を見ないとなかなか想像がつかない世界だと思いますので、ぜひご自分の目で見てきていただきたいです。
ギャラリーの展示
一通りの工程の見学はせいぜい30分ほどです。その後は、併設された過去の作品が展示されているエリアで自由に見学して飽きたら帰るスタイルです。これまた写真撮影はダメと言われたので、もう市販されていないとても素敵な作品がたくさんありましたが、映像はありません。。
写真はダメだけど、ということで変わりにカタログをもらえたので、お願いしてみるとよいのではと思います。ちなみに右のギャラリーのパンフレットに写っている作品が1600万ユーロのものですね。巨大でした。
まとめ
以上、リヤドロの工場見学の情報をまとめてみました。僕は結構、いろんなところで工場見学に行くのですが、中でもここはかなり鮮明に記憶が残っています。なかなか実際に作業をしている人を囲んで話を聞きながら見学できることはないので、ここはかなりおすすめです。
担当されていた職人さんは高齢者の方が多く、コロナ禍で閉鎖されているのももっともですが、無事、コロナが終息した暁には、このイベントも通常再開されることを切に願います。
なお、当時、アウトレットが併設されているという噂があったのですが、それらしき建物などはなかったですね。購入希望の方は聞いてみればいいと思いますが、それを目当てに行ってもがっかりするかもしれません。事前のメールで確認することをおすすめします。