スペインのパラドール滞在の楽しみ方

観光ビジネスが盛んなヨーロッパでは、歴史的建造物を利用した国営ホテルが運営されている国がいくつかあります。今回取り上げるスペインのパラドール(Paradores)もそのひとつです。

この記事では歴史好きや建築好きを魅了するパラドールについて解説してみます。

パラドールとは

パラドールの概要:スペインの国営ホテルチェーン

パラドール(Paradores)は、正式名称を「Paradores de Turismo de España, S.A.(スペイン観光パラドール株式会社)」といい、スペイン政府が100%出資する国営ホテルチェーンです。城、修道院、宮殿といった歴史的建造物や、国立公園内の特別な立地に設置されているというユニークな特徴を持ちます。

現在スペイン全土に約100軒のパラドールが展開されており、そのうち30軒が文化財として認定され、さらに15軒が歴史的地区内に位置しています。単なる宿泊施設を超え、スペインの歴史と文化を体感できる「生きた博物館」としての役割も果たしています。

パラドールの歴史

パラドールの歴史は1928年にさかのぼります。アルフォンソ13世の発案により、アビラ県のナバレドンダ・デ・グレドスに最初のパラドールが開業しました。当初は王室の狩猟パーティー用の宿泊施設として建設されましたが、同時に観光振興を目的とした国営ホテルとしての機能を持って開業しました。

この最初のパラドール・デ・グレドスは、現在でも営業を続けており、1978年にはスペイン憲法の起草者たちがここで会合を開いたという歴史的意義も持っています。

1930年代以降、内戦やフランコ体制を経て、パラドールは国家のプロパガンダ手段としても活用されました。しかし民主化後の1991年に株式会社化(ただし100%国有)され、現在は持続可能な観光モデルとして国際的に高く評価されています。

パラドールの特徴と種類

パラドールは立地や特色によって3つの主要カテゴリー(エセンシア、ナトゥリア、シビア)に分類されています。

後述の通り、パラドールの客室にはスペインの伝統的な内装や装飾が施されており、古い時代の生活様式を体感することもできます。高級ホテルとして運営している場所が多いので居住性も悪くありません。また、パラドールのレストランでは、地元の伝統料理やワインなどの提供もあり、多彩な歴史を持つスペイン各地の料理を楽しみながら、歴史的建築物の雰囲気を味わいつつ旅ができるというのもその魅力の一つです。

いずれの施設も観光名所にあり観光拠点としての利用にも適しています。観光資源を宿泊施設として利活用することによって、文化振興に役立てようという試みですが、地元を象徴する施設が使われていることから住民と摩擦があるケースもあり、反対運動などが行われている場面に出くわすこともあります。

Paradores Esentia(エセンシア:本質)

歴史的・記念碑的価値の高い建物内に位置するパラドールです。城、修道院、宮殿などの重要な歴史建造物を活用しており、中世の雰囲気を存分に味わうことができます。パラドールの中核をなすカテゴリーで、全体の半数の施設がこの分類に属しています。

Paradores Naturia(ナトゥリア:自然)

山間部や海岸地域、自然公園などの自然豊かな立地に設置されたパラドールです。施設そのものよりも立地環境が主役となる宿泊施設でハイキング、天体観測、マリンスポーツなどのアクティビティが充実しています。

Paradores Civia(シビア:都市)

主要都市の中心部や歴史地区内に位置するパラドールです。マドリード、バルセロナ、セビリアなどの観光都市で、文化施設へのアクセスが良く、ビジネス利用にも適しています。会議室やビジネスセンターなどの設備も充実しています。

パラドールの公式サイト(英語)

パラドールの設備

部屋の内装

部屋の内装はリノベーションされて現代的な快適性を備えていますが、木製の家具が使われた中世の雰囲気を演出した部屋が多い印象です。

アメニティ

アメニティはパラドール共通のパッケージで用意されていますが、ホテルのランクによって用意されている種類には若干の差があります。シャンプー類の中身はホテルによって違いがあるものの、個包装ではなく、備え付けの共通のボトル入りです。

コーヒーやお茶類も部屋にあります。茶葉の銘柄は共通のようですが、5つ星クラスの部屋では水のボトルも用意されていました。

共用部

ホテルの共用部を散策すると、様々な遺構に出会うことができます。現在も利用されている教会が併設されていたり、貴族の応接室だったり、etc。歴史の一部に直接触れることができるのがパラドール滞在の醍醐味です。

レストラン

朝食はパンやハム、チーズなどのコンチネンタルビュッフェとスペイン料理のホットミールのオーダーができるところが多いです。ただし、5つ星クラスでもメニューの種類が少なく、とりわけ野菜の提供が少ないので長期滞在にはあまり向かないかなという印象です。

ディナーでは地元料理を提供するレストランが運営されていたりもしますが、利用の際には予約が必要なケースも多いので要確認。スペイン人は夕食の時間が遅い(21時以降が本番)ため、20時以前には空いていなかったりもします。

パラドールの楽しみ方

特にエセンシアのカテゴリーのパラドールでは、城砦、修道院、宮殿など、その土地ならではの歴史的な意義がある建造物をリノベーションしたホテルということだけあって、他では見られない特徴的な遺構を見ることができたりします。パラドール自体が観光地となっていることも多いのですが、一般客がチケットを払って見学する中で、ホテルの宿泊客だけしかアクセスできないような場所もあったりします。

ホテル内部には、そういった遺構についての解説文が添えられているので、それらを見ながらじっくり歴史を学ぶのも醍醐味の一つでしょう。

また、立地的にも観光のしやすい場所に存在することが多いので、純粋に観光拠点としても選択肢に入ると思います。

パラドールの予約方法

ホテル予約サイトで普通に予約できるので、常用しているサイトを利用すればよいかと思います。

パラドールの公式サイトからも予約可能です > https://paradores.es/en

ホテル予約サイトでホテル検索する前に、スペインの旅行先を選んだら、「地名 パラドール」で検索してパラドールの有無を調べてみるとよいと思います。基本的に有名な観光地にはパラドールがあると考えてよいと思います。

ちょっと情報が古い部分がありますが、海外旅行初心者の方には下記記事も参考になるかと。

【年200泊する僕が徹底解説】得するホテル予約サイトの選び方(ノウハウ全部出し)

パラドール滞在記

以下、僕が実際に滞在してきたパラドールの滞在記のリンクを載せておきます。

グラナダの世界遺産アルハンブラ宮殿に宿泊

世界遺産として登録されているアルハンブラ宮殿の内部にある世界的にも有名なパラドールです。宮殿が閉館した後にも敷地内を散策できる稀有な体験ができます。

【巡礼地】世界遺産サンチャゴのパラドール滞在で大聖堂を臨む

スペイン北部の巡礼路の最終地点の広場に面する好立地のパラドールです。巡礼を踏破して歓声を上げる巡礼者たちの姿を連日見ることができます。

【おすすめ世界遺産】ローマ遺跡の街メリダのパラドールに滞在

ローマ時代の遺跡が多く残るメリダにあるパラドールです。特徴的な広い中庭では夜に音楽会などが開催されていました。

スペイン巡礼路レオンの5つ星パラドールに滞在

サンチャゴに向かう巡礼路に位置するレオンのパラドールです。元修道院の建物をリノベーションした快適なホテルでした。併設された教会など見どころもたくさん。

【美食のバスク】オンダリビアのパラドールに滞在

美食で有名なバスク地方、サンセバスチャンの隣街のオンダリビアのパラドールです。丘の上の武骨な城塞を体感できます。

まとめ

純粋な居住性ということでは最新鋭のホテルには見劣りするものの、それを踏まえてもなお泊まりたくなる魅力を抱えるパラドールです。ぜひスペイン滞在時には選択肢の一つとして検討してみてください。

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